エロゲ好きの自由帳

エロゲ感想置き場。文章力は皆無

さよならを教えて 感想

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総合評価   ☆☆☆☆      (4/5)
シナリオ   ☆☆☆☆☆   (5/5)
キャラ    ☆☆☆     (3/5)
CG    ☆☆☆☆    (4/5)
音楽     ☆☆☆☆      (4/5)
エロ          ☆☆☆             (3/5)

 (DL版をプレイ)

 怪物ゲーム。良くも悪くも有名すぎる作品。キャッチコピー、初板のROM、注意書きどこを見てもヤバいニオイしかないゲーム。kanon作れと言われて作ったゲームらしいが、どう解釈したらこうなるのか理解に苦しむ。狂気、電波、外側飛び出さず、内側でぐるぐると回り続ける様な物語で救いはまるでない。今でも一部に熱狂的な人気を誇り語り継がれるのも納得の作品。

 

 

 シナリオ

 あんまり有名な為結末は知っていたのだが、それでもこの作品は面白かった。例の天使様ですやフェラチオさせるの選択肢等は正に電波といった感じ。他にも一般的なエロゲで言う共通段階で、主人公がいきなりヒロインを強姦したり四肢をもぎ取ったりとやりたい放題。そんな事をしても翌日にはなんともなかったように主人公と出会うのだから恐ろしい。

 だが個人的には一見何のこと無いような、それこそ読み飛ばしてしまいそうなぐらいの中に入ってくる寄行の方が強く狂気を感じた。

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 本当になんでも無いように、ズボンを履くという行動とるのかと思いきやそのまま当たり前の様に履いたもの脱ぐ。他にも廊下を走ってるのかと思えば、用を足しながら廊下を走る。その後ルーチンワークの用に個室トイレに行くのだが、そこで用足してしまったから用はたさないといった文章が入る。行動の意味というか整合性というかが噛み合わず何をしているのかどこにいるのかがどんどんわけが分からなくなる。

 システム面でもこの狂った世界を演出している。どんどん音が狂っていくチャイム音、移動先と背景が全く一致しない。(背景はプールなのに、場所は図書館といった感じ) 

 何よりこの作品は人の死によって狂っただの裏切りによって狂っただの、前提事件からの狂いっぷりを書くのではなく、初めから狂っている人間の崩壊とその結末の物語の為、一般的な泣きゲーや鬱ゲーといったものとは違う苦しさがある。

 

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どの選択肢でもこの台詞になる有名なシーン。ここから目に見えておかしくなる。

 

  さよ教のヒロインは睦月を除いて主人公の妄想の存在である。妄想の少女たちは当然、主人公の望む様な存在になっていく。みんながどこか心に傷をおっており、自分が守り助けてあげないといけない、そういった存在に設定していく。分かりやすいのは屋上の少女だろうか。主人公は聞き出した覚えのない少女のトラウマを絶対のモノのように断言する。傷ついている可愛そうな少女だと。

 

 傷を負ったヒロインの庇護と救済は物語体験的に非常に甘美なものだ。トラウマを癒すという展開はプレイヤーにとってはヒロインの救済という読了の良さと、それを成し遂げた主人公に感情移入して得る達成感を得ることができる。

 ある意味、トラウマというものを美しさの演出として使い、物語的な美しさと共に尊いものだと扱っている。

 さよ教はこういった部分を真正面に否定してくる。本来トラウマとはどうしようもなくグロテスクで醜いものだ。そういった部分を救うべきヒロインの不在という形で突きつけてくる。お前たちが感じている感情は美しいものでも、尊いものでもなく、ただ自己中心的な醜いものだと

 

「先生は、不幸なコが好きなんです。不幸だけれど、健気に運命に立ち向かっている弱々しい魂。そんな相手を助けることで、自分が大きくなったような錯覚を得て満足するんです」

「そうなんだろうか?僕は可哀想な少女を救うために日夜…」

「嘘。可哀想な自分を…でしょ?そして先生は、自分を慕う、かよわい相手を思う存分にいたぶって安心するんです」

「いやしかし、ぼぼ僕は…」

「自信のない自分を棚に上げて、自分よりも弱っている相手に手を差し伸べる。自分以外のなにかを救うフリをすることで自分を納得させるんです」

「けれど僕は、そうじゃなくて、信じたいから…安心したかったから」

「そう…ですよね。自分を慕ってくれる弱者。でも、その弱者が運命に立ち向かって羽ばたこうとすると、我慢できなくなってしまう。いつまでも自分だけの標本箱の中にコレクションしておきたいのに…」

 

 妄想の少女を愛し救うという自己中心的などこにもいかない一方的な愛。強烈な自己愛。欲望通りのヒロインに、そんなヒロインを救済する理想的な自分。他人を愛しているようで他人を愛している自分を愛しているそんな主人公。

 

 

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有名なマリオの下り。主人公の妄想への語だが、マリオを操作している者が悪いという主人公の結論になる

 

 この主人公の自己愛の形というか、ヒロインの作りや扱い、それに対する睦月の言葉は自分のヒロインに対する好みの一番醜いと感じる部分をむき出しされたような気分だった。
 私の好みはまんま上記のやり取りの通りで、不幸な少女を好む事が多い。不幸な少女がその不幸な運命に立ち向かう姿、それを救済するようなシナリオは私にとっては非常に好ましいものだ。またそれと同じぐらいそういった不幸な少女がそれ以上の理不尽や不幸に晒されると言ったものが好きだ。

 ヒロインが不幸であれば、救われる理由があると安心する。ヒロインが救われればトラウマの過程も含めて救済は美しいものだと思う。不幸の少女が傷つくのはより美しさが際立つ。

 他者の事を思っているのではなく結局自分の欲望のはけ口としか見ていない。分かってはいてもここまではっきりと断言されると刺さる。

「先生は…自分のことが一番好きなんですよね。誰でもそうだから仕方ないけど…」

「どうしてそう思うんだ? どうしてかわる?どうして…どうして……その通りだ」

「自分を慕ってくれる相手が一番好きだから…自分を拒まない相手にしかここを開けないから…」

「そうなんだろうか? 僕は可愛そうな少女を救うために日夜…」

「嘘。可愛そうな自分を…でしょ?そして先生は、かよわい相手を思う存分にいたぶって安心するんです」

「罪悪感を抱えて、溜め込んで、どうにもならなくなるほど溜め込んで、その罪悪感をなんとかしようとして、自分以外のなにかを救うフリをするんです」

 

 もう一つこちらのやり取りは、所謂主人公を無条件で愛してくれるタイプのヒロインの事だろうか。

 結局一途に自分を慕ってくれるヒロインが好きなのはお前が自分のことが大好きだからだろ?と

 こういった突きつけを唯一の実在するヒロインである睦月に言わせているところがまたえげつけない。

 

 最終的に妄想であるヒロインを主人公は殺してしまう。理想を押し付けても上手く行かずそのまま破壊してしまう。

 妄想は現実から主人公を守る役割であったのにその妄想にすら負けてしまう。(実際となえに睦月が天使だと告白するまでは落ち着いており、告白した日を堺にどんどん狂気的な演出が増える。)

 そうして崩壊し迎えたEDはさらなる狂気を感じさせる。このゲームどのヒロインのルートでも、例え現実に唯一存在する睦月のルートでもEDは同じだ。

 救いもなく希望もない内に内に回り続けそのまま終わる。

 少し前向きな雰囲気を醸し出してからのこのEDは嫌な鳥肌がたった。

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CG

 グロテスクなものも多い。演出で多いのがCGの一部分の拡大からはじまり中々全体像が把握出来ないように見せているパターン。全体像も勿論映るのだが拡大で写っている時間に比べると短い。

 後は妄想の天使様CG。影のある神々しさというか。どこか畏怖を感じるようなものだった。

 

エロ

 シナリオもアレだからこっちもあれ。ヒロインの正体に合わせたものがあり。例えばまひる(子猫)のシーンは明らかにまひるの体が小さすぎる。こより(ゴミ捨て場の人形)は手足が千切れた(というか千切った)ダルマ状態等など。狂気的なエロ。

 個人的には性的な目で見るのはしんどい。

 

音楽

 BGMは少ないが、質は高い。この狂気的な作品の演出になくてはならない。

 

 

総評

 噂通りの作品。この作品を知る過程でネタバレも知っていたのだがそれでも面白く魅力がある。ただ人を選びすぎる作品であるのは間違いない。ネタ的なゲームだと思ってやると本当に痛い目に合う。悩んだらやらないほうが良い。また落ち込みやすい人や影響を受けやすい人は触らない様にしたほうが良い。