異セカイ迷子の半透明と優しい魔法使い
今回はエロゲではなく、本の方の感想。
いろセカ、さくら、もゆ。の漆原先生の作品。セカイ感や作風はエロゲ作品と同じ。
ラノベだとキノの旅が近い印象。あっちは国を旅するお話だけど、こっちはセカイを旅するお話。
全体的に良いところは既存作品同様現実の厳しさとその中にある優しさが描かれている点。特に今回は本媒体かつ、章刻みの為いつものような冗長さを感じなかった。
逆に微妙に感じた部分は、過去作で見た展開や設定が多い事。さくら、もゆ。の時も感じたが、見たことある設定や展開が多く新鮮味を感じなかった。需要的にもそれで正解なのかもしれないが、過去作がちらつかない様な新しい物語が欲しかったのが個人的な感想。
ハッピーエンド
主人公である死神は自分と似た人物の結末をハッピーエンドにする為に旅をしている。バッドエンドを回避し、ハッピーエンドに導くのだが、彼女が力を貸せるのはその人物が最も後悔した地点からではなくてはいけないという制約がある。その為この物語におけるハッピーエンドは誰もが称賛するようなきれいな終わり方をしない。
個人的な印象としては、そのまま進めばどうしようもないどん詰まりの未来から、先に進める可能性を持った未来に進めるようなEDになるといった印象だった。
また、これが不思議な力による超常的な救済ではないという点が私個人として好きな所だった。2章で語れていたが、あくまで選択したハッピーエンドはこういう未来があるというものを見せてもらうだけで確約するものではない。選択したとしても自分がその未来に向かうように、努力しなくてはその未来にたどり着けない。そしてその行動により救われた人がいる、そういった結末だからこそ、ハッピーエンドと呼ぶに相応しいんじゃないかなって。
神様は超常の存在による救いではなくて、あくまで人の行動によって救われた結末にたどり着くという点が良いと感じる部分だった。
総評
作者のエロゲ作品が好きな人は文句なく楽しめるといった作品。逆にこの作品が入門に最適とも言える。また主人公が基本的に第三者であるので、色々なセカイに住む人々の描写が一人称視点で語れており、セカイの事情について入りやすいのも良い点。
厳しいセカイの中で時折あるやさしさ触れられるそんな優しい作品です。