ATRI -My Dear Moments- 感想
総合評価 ☆☆☆☆☆ (5/5)
シナリオ ☆☆☆☆☆ (5/5)
キャラ ☆☆☆☆☆ (5/5)
CG ☆☆☆☆☆ (5/5)
音楽 ☆☆☆☆☆ (5/5)
*全年齢向け作品でエロゲではないですが、ここではエロゲ感想と同じ枠で扱っています。
何気に初のALL5評価。自分の好み作風、キャラ(アトリ)というのがあるとはいえ、最初から最後まで楽しく心に突き刺さった作品。
評価点
シナリオ
ヒューマノイドとの恋物語という点と人類の衰退の世界観の中で生きる人達の物語の描写が、魅力的。
子供の可能性の美しさ
まず、後者に触れると、序盤の発電機の下りが分かりやすいだろうか。発電機を作る中心になったのは辛い居場所から逃げてきた主人公と、現状の悪環境を諦めてきた竜司の2人だった。そんな2人が同じ目標を持ち、周りを巻き込んで大掛かりな発電機を作ることになる。
ここは、みんなが仲を深めていく、所謂青春シーン的な良さも存在するのだが、大人たちが諦めた事を子供たちで成し遂げるという、滅びかけの世界であっても失われない人間の強さ、子供の可能性を感じられるものだったと思う。
特に、この発電機のシーンは、授業で作った稚拙な発電機の明かりを頼りに必死に本を読み、知識を吸収しようとする凛々花がきっかけであり、なおさらそのように感じる。
また、単純に好奇心を失わない子供はすごい!諦めた大人はだめだというだけでなく。きっちり子供の未熟さ故の爪の甘さ、そんな大人をフォローするというシーンも存在しており、子供の可能性と、それを発揮させてやるための大人のフォローといった一種の理想的な形で非常に美しい。
アトリ
ヒロイン。ヒューマノイドという設定を記号的に使わず、ヒロインとしての魅力と絡めてとんでもない破壊力になっていた。
まず、アトリと夏生は複雑な関係であった。最初は、借金を返すための祖母の遺品、関係が進めば、自分にとって安心できる”足”、異性として気になる存在、恋人、恋人の役割をこなしていたヒューマノイド、地球の中心と言いきれるほどの恋人。
たった44日。そんな短い期間の中2人はそんな関係を築く。
短い生の中、彼女は色々な物を得て、色々な物を与えた。最後の最後、存在の終わりという儚さも相まって、ここの彼女はゾッとするほど美しい。
ゲーテのファウストから引用された「時よ止まれ、お前は美しい」はこのひとときの最上の輝きを表している。
時よ過ぎゆけ、お前は残酷だ!と度々出ていた辛い出来事への思いが最後の最後で美しいものへと変わる。
地球を救う
地球を救うというのは、主人公にとっての目標であり、救済である。というのは、作中で語られていた通り。
主人公にとっては、地球の救済は子供時代の孤独や足を失った事がタダの痛み以上の価値に、父にとっては、妻の死へ
彼らは失ったものへ価値を与えるために地球を救うという目標を達成しなくてはならない。
そうじゃないなら、余りに取りこぼしたものが可哀想すぎる。
アトリが、夏生へアカデミーに戻るようにいうのもこれである。アトリは与えられた機能をこなすだけでなく、学習しより価値のある存在を目指していた。
言ってしまえば、現状維持、停止にこだわる夏生に対して地球を救えとこだわるのは、彼自身の価値を高め、地球を救い、自分を救ってほしいからだと考えられる。
要するに甘えてないで、頑張って先にすすめとケツ叩かれてる。
最後の最後、ロケットの打ち上げシーンでは、アトリを失いかなり参っていた様子の夏生だが、父が打ち上げたロケットを見て、俺、アカデミーに帰るよとポロリと口から出る。
アトリの前ではカッコをつけても、やはり最愛の人を失った悲しみは誤魔化せなかった。ただ、同じように愛おしい人を失いながらも、地球を救うという目標の1つを成し遂げた父のロケットを見て、思わず口から出ていたように見える。
それに、ここで足踏みしていたら、約束して先に眠ったアトリが可哀想すぎる。
キャラ
アトリ(キャラ)
とにかく言える事は一貫してかわいい。序盤の、弱っている主人公を母性を感じる様な優しさで癒やしてくれる彼女も、中盤の無感情ながらも所々から見える感情も、終盤の感情を自覚し、それに振り回される彼女も全てが愛おしい。
この彼女の変化がまた上手く。序盤はやけに主人公に優しく、ヒューマノイドの恋愛にしては上手く行き過ぎだなと思いきや、中盤でそれをひっくり返し喪失感に叩き落とす。機械的になってからは、メモリーの破損で記憶がなくなる描写をいれ、更に苦しくなる。感情を自覚してからもそれは、続き、楽しく愛おしい日々の中、否応なく終わりを実感させられる。
可愛くて、心を惹かれるからこそ、苦しく感じる部分がそれを引き立て、より一層魅力的なキャラになってる。
個人的にはめちゃくちゃツボ。外見も好み100点だしさいきょ。
CG
とにかくきれい。キャラだけでなく、街や海も引き込まれるぐらいきれい。
お気に入りは、船で寝る夏生を見守る大人びたアトリ、中盤の初エデンの夜の2人、BADの返り血レイプ目、そしてこの笑顔。
総評
ほぼライター買い、アトリのキャラデザ買いだった為、それなりに期待値は高かったのだが、それを軽く超えてくる出来だった。
これならフルプラ分の値段を喜んで出せるぐらい。