ネコっかわいがり!~クレインイヌネコ病院診療中~ 感想
総合評価 ☆☆☆☆ (4/5)
シナリオ ☆☆☆★ (3.5/5)(シナリオ)
シナリオ ☆☆☆☆ (4/5)(シナリオ)*後日談込み
キャラ ☆☆☆☆☆ (5/5)
CG ☆☆☆ (3/5)
音楽 ☆☆☆☆☆ (5/5)
エロ ☆ (1/5)
可愛い猫耳娘達とイチャイチャする萌えゲーと思いきや……。
トゥルーにおいては今までのふわふわとした空気感は消え失せ、もはや別物と呼べる作風になる。萌えゲー部分は良くも悪くも平凡な為、そのトゥルーがすべての作品。
こういった部分を知らず、かつ萌えゲーが実は…という展開を楽しめる人だけが100%楽しめるというなかなか難しい作品。
本編
舞台は病院だが、雰囲気が明るくほのぼのとした萌えゲーといった雰囲気。強いて言うならヒステリック起こしがちなフェイから精神病院かな?といった考えが出る程度。
一応所々に後半の影が見え隠れしている部分はあるが、ぶっちゃけここは退屈。よく言うなら、後半の展開のため、貯金ポイントとでもいうべきもの。
全ヒロインの分岐を終わらせたあとに出るENDCGはトゥルーの後に見るとなんとも言い難い気持ちにさせられる。
トゥルー
このゲームの本性。可愛い猫耳ヒロインたちの正体とその末路がかなりエグく描かれる。
特に最初の死者であり、日常の象徴とも言うべき存在であった、ウミの末路は否が応でも救いようのない現実を叩きつけてくる。(更に、娘のように思っているというノーマに射殺させるあたりがえげつない)
こういった展開の絶望感や、ヒロインであるアリス等、たしかに胸をえぐられる様な展開は、あるが後半が鬱いことを事前に知っていたので、楽しめはしたが、物足りなかったというのが本音。
ただ後半が鬱な事を知らなければ、手を取ることもなかったので、私がこの作品を楽しめるのは良くも悪くもこのぐらい。
アリス・クレイン
彼女という存在が私にとってのこの作品の勝ちと言っても過言ではない。
ある意味この作品は彼女という存在をひたすらいじめ抜くための作品だと感じた。
唯一の非感染者として医者としての役割、治療のためとはいえ、恋人の他の女性との性行為を推奨しなければならない。
トゥルーの後、改めて本編の彼女を見るとよく潰れなかったものだと思う。愛しい人は自分の事を忘れ、いつ来るとわからない患者のDOTESの暴走をごまかしながら日々を過ごす。
本編中で、スプラッタシーン(ギャグ落ち)があるが、ここでの彼女の地の文を読むに実際相当追い込まれていたんだろう。
本人自体は、普通の女性といってもいい精神性の持ち主なので余計に気の毒
自分は、世界なんてどうでもいいから愛しい人と一緒にいたい、でも愛しい人は世界の為に死んでしまう。死んでしまたいほど悲しいのに、死んでしまったら死なせてしまった意味が失われてしまうから死ねない。
彼女が一体何をしたんだというほどの仕打ち。
後日談
PIXIVに作者の書いたED後の後日談があるのだが、これまたアリスにとってはヘビーな内容となっている。
シナリオ自体は、ジャックやフェイが命を使ってアリスがそれを形にしたものが報われるという後日談としてきれいなものなのだが……。
本編においてアリス以外の唯一の生き残りであったナミを救うというのがこの後日談。ナミは生殖が出来ないと言われているDOTESでありながらジャックの子を孕んでいた。
アリスは妊娠しているわけもなく、彼女の独白が胸に突き刺さる。
この幼い少女が母になり子を産もうとしている。わたしの愛した優作の子を。この子はなぜ波のお胎を選んだのだろう……どうしてわたしではなかったのだろう。それであの人との子を宿せるなら……猫になることなど一瞬だって迷わなかったのに。孤独な胎を撫でるたび悲しみとも怒りともつかない感情が渦を巻く。優作、あなたはどうしてわたしには何も残してくれなかったのですか? 波、あなたはどうしてわたしの大切な宝物を持っているのですか? 空しい問いかけは虚空に滲む。
彼女は、別に英雄に成りたかったわけでも、世界の平和を願っていたわけでもない。少なくとも、彼女の愛しい人たちを切り捨ててまで。
「わたしにはあの小さな診療所こそ何より大切なものだった。あなたがいて、ノーマがいて、フェイや双子たちがいた。あの幸福な日々がずっと続くのならフェンスの外の世界なんてどうなったって構わなかった。わたしはあの診療所で世界の終わりを見届けるつもりだった。なのにあなたは世界へその身を焼べた。英雄の血は誰にでも流れているわけじゃない。わたしはあなたのように世界を愛せない。それでもあなたはわたしに戦えと言った。その結果残るものはあなたのいなくなったひとりぼっちの世界だっていうのに」
この後日談には結末が2種類あり、1つは、アリスが死ぬ結末、もう1つは生存する結末。
どちらにしても、アリスはナミを守るDOTES患者たちの姿に涙を流し、優作の守りたかった世界を理解する。
自分にとって残酷なものばかり突きつけた決して愛せない世界の中で美しいものを見つけた。涙を流せた。
総評
可愛らしい猫耳という皮を被り、DOTESという絶望的な存在、優作とアリスの「幸福の王子」を模した関係性等、単に本編とトゥルーの落差だけが全てではない作品。
たしかに素晴らしい作品ではあるのだが、後半の詰め込み具合は否定できない。